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特集10年目のわたしたち

10年目の手記

20.2リットル

高野信也

ガソリンを買いに行った

並んで ならんで 待って まって
ガソリンの減りを気にしながら いらいらしていた

どうして こんなにたくさんいるのかと
自分もそのひとりのくせに
ただ 責めながらまっていた

見えてきたのは 開けない言い訳など
山ほどあるはずの 少し傾いた
ガソリンスタンド

スタンドの人は 雨でびしょぬれになりながら
一台3000円ぶんしか
いれてあげられません
すみません と
頭を下げた

あさから何百台も ガソリンを入れ続けながら
そのひとは
すみませんとわたしに言ったのだ

すみませんと いったのだ

すまないのは わたしなのに
ヒトを責めながら待った果てに
ほんとうの ひとの尊さに出会った

入れてもらったガソリンは
20.2リットル

地震の前と同じ値段だ

自己紹介や手記の背景

詩人をやっていますので詩でお伝えします ただあの風景を忘れたくないとそう思いました

20.2リットル

高野信也

自己紹介や手記の背景

詩人をやっていますので詩でお伝えします ただあの風景を忘れたくないとそう思いました

連載東北から
の便り