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特集10年目のわたしたち

10年目の手記

地元が好きということ

あず

「出身は岩手の盛岡です」。大学の新入生歓迎会でとっさに嘘をついた。
私の地元は岩手県の沿岸に位置する大槌町。震災で町は壊滅的な被害に遭い、民宿兼自宅は全流失。家族は無事だった。

高校2年の時に震災を経験し、大学進学では同じ被災地でもある宮城県に引っ越した。駅に降り立った時、当たり前にインフラが機能し、ビルが立ち並び、町がちゃんと残っている姿を見て、瓦礫の山からやってきた当時の私はこのギャップになんとも言えない気持ちになった。

大学生活はワクワクと不安があり、大学生の醍醐味でもあるサークル活動はワクワクの1つでもあった。そのサークル飲み会で一番初めに行われる自己紹介。そこでは名前、出身、学科の三拍子がお決まりだった。楽しそうに会話をしている周り。そんな中で“出身は被災地”なんて言ったらこの場の空気が壊れると思い、いつの間にか自己紹介タイムでは「岩手の田舎の方です」と誤魔化したり、挙げ句の果てに嘘をついたりした。思い入れのある町を堂々と言えない辛さと嘘をついた罪悪感が入り混じりながら、その場を凌ぐことに精一杯だったことは今でも覚えている。多分この時から“地元”や“被災地”に向き合うことが私の中で始まっていたのだと思う。

現在は地元に戻り新たな挑戦をしている。今になって思うのは「やっぱり地元が好き」ということだ。あの時、“大槌”と言えなかったことは後悔しているが、今なら自信満々に“大槌”と言える。それは地元への誇りと郷土愛があるからだ。10年が経ち、瓦礫の山から復活した町で新たな目標は“大槌が好き”と町を誇れる人を増やすことだ。

自己紹介や手記の背景

岩手県大槌町出身。高校生の時に震災を経験し、一度県外へ出たのち、2018年にUターン。
3月11日が近づく中で、「10年経って今思うことは?」と問われる機会が増え、「やっぱり地元が好き」と再認識したことがきっかけで今回その思いを言葉に残そうと手記を書きました。

地元が好きということ

あず

自己紹介や手記の背景

岩手県大槌町出身。高校生の時に震災を経験し、一度県外へ出たのち、2018年にUターン。
3月11日が近づく中で、「10年経って今思うことは?」と問われる機会が増え、「やっぱり地元が好き」と再認識したことがきっかけで今回その思いを言葉に残そうと手記を書きました。

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