Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021

連載東北からの便り

2020年リレー日記

2020

11

11月23日-29日
竹久 侑(水戸芸術館 現代美術センター 主任学芸員)

11月23日(月・祝)

天気|晴れ

場所|水戸

連休の最終日、このリレー日記の私の番が巡ってきた。
休みといえば、基本、うちでは子どもたち優先でスケジュールが決まる。今日は11月下旬とは思えないほどの陽気に、いきなり「プール(屋内)に行きたい」と決意表明する息子。けれども、ある事情でプール行きは断念せざるを得なくなり、そのことに号泣する娘と息子。気を取り直させようと、急きょ巨大ローラー滑り台のある隣町の丘の上の公園に出かける。午後も3時を過ぎているというのに盛況であるその公園では、子どもたちも屋外なのにマスク着用。遊具で遊ぶときにかなり近い距離になってしまうことがあるので、たしかにマスク着用が妥当。ローラー滑り台で遊ぶには丘の上り下りが強いられるため、大人にはいい運動になる。帰りがけ、「シャボン玉おじさん」なる方がボランティアで提供しているシャボン玉を、丘の上から空にめがけて飛ばして帰路に就く。隣ではスケートパークの建設が進んでいた。公共事業でスケートパークを建設するとは時代の変化を感じる・・・。
夕飯のメニューは子どもも大人もてんでバラバラな希望だったため、焼き飯、オムライス、鍋が混在する食卓となった(笑)。

11月24日(火)

天気|くもり

場所|水戸

3連休を「連休」らしく過ごしたことで、今日はタスク満載の休み明けの一日。まずは、来年2月20日に始まる担当の企画展「3.11とアーティスト:10年目の想像」に向けて制作される、藤井光さんの新作のため今週末に行うオリエンテーションと翌週末の撮影の準備。現場に入ってもらう同僚たちと打ち合わせを行い、出演する子どもたちとその保護者宛に送る「当日のご案内」の原稿を作成した。
午後には、本展の会期中にオンライン授業をしてほしいという依頼のあった京都の高校の先生方と、同僚の教育チームとともにオンライン打ち合わせ。もともとは来館しての団体鑑賞が2年前から計画されていたが、コロナの影響で来館は見送り、オンラインに切り替えて授業を行うにあたって、何を実施するのがよいか協議した。ここの高校はこれまで生徒たちが東北の被災地に行くことを毎年続けてきていて、行った生徒たちは全校に向けて発表するほど震災に対して意識の高い学校だという。ただ、今回オンライン授業を受けることになる1年生だけはあいにくコロナの影響で東北に行く機会をまだ持てていないとのこと。東日本大震災当時4-5歳だったという彼・彼女らに、そして京都という遠方に住む彼・彼女らに、東日本大震災をめぐる芸術表現についてどのように伝えるのがよいか意見交換する。ここの生徒たちの大半は「つくり手」になることを望んで進学するということで、先生からの依頼はアートが大震災にどのようにかかわれるのか、いまいちまだ実感できていない生徒たちに向けてそのへんのことを話してほしいとのこと。
オランダのニシコさん(本展出品アーティスト)から、新作の進捗状況についてメールがあった。オランダでのコロナの状況は日本より悪いようだが、それでも感染対策に考慮しつつ計画通り撮影と収録が進んでいるとのこと。2011年からずっと継続している「地震を直すプロジェクト」の第7段階にあたる新展開を本展で発表していただく。新たに撮影された写真の画像データを見て、携わる人の愛情が伝わってきた。公開が楽しみ。

11月25日(水)

天気|雨

場所|水戸→東京→水戸 特急ひたち

今日は、来年度予定事業である個展の打ち合わせのため、久しぶりに都内へ出張。
写真家のA氏と補佐の方にお会いする。10月に顔合わせしてから初めての打ち合わせ。展覧会のコンセプト、ねらい、おおまかな会場構成、水戸で撮り下ろす新作のこと、そのためのワークショップなどについて打ち合わせをしているあいだに、あっという間に2時間半が過ぎていった。
キュレーターは企画書を書くことで展覧会のアイデアをまず言語化していくが、そのつぎの第一歩として、個展の実現に向けて「パートナー」となるアーティストや事務所の方々とのコンセプトの共有、アイデアの出し合いがある。ギャラリーという空間をどう演出するか、胸が膨らむとともに実務的な面での協議も同じように大事。
「家族」というもの、そのいろいろな在り方、ひいては自分の家族について想いを巡らせる機会になればと展覧会の構想は膨らむ。
同時に、予算の作成、助成金申請など、コロナ禍で打撃を受けないわけのない実務面をクリアしていかなければならない・・・晩秋から年末にかけて、まさにそういう時期。
打ち合わせが終わって特急ひたちに乗ってメールをチェックすると、翌週末の撮影に向けて藤井さんが希望する小道具類の造作リクエストのメールが届いていた。わっ! あと1週間半しかない! 明日明後日には打ち合わせしなければ。

11月26日(木)

天気|くもり

場所|水戸

翌週末の撮影に必要な造作物について、朝いちばんに藤井さんと展示担当の同僚とオンライン会議。まったく動じず対応してくれる同僚の頼もしさにはいつも救われる。
その後、部門会議を経ての昼休みには、別の同僚たちと週末のゲストに向けたお弁当の物色。ゲストのためのお弁当は、現場の「種類」を考慮しつつ、栄養バランスが良くて、胃もたれせず、しかもしっかりとエネルギーになって午後につなげられることをイメージして選ぶ。もちろん自分が食べたいという視点も忘れない(笑)。
午後は、出品作家である小森はるかさん+瀬尾夏美さんと、仙台の若手建築家グループの面々を交えて初のオンライン顔合わせ。彼女たちが陸前高田にかかわりながらずっと続けてきた風景の変貌についての記述と記録を展示で紹介するために、空間設計の専門家に相談しようということになって迎えた今日の会議。仙台サイドですでにイメージのすり合わせがなされていてラフまでつくってくれていたおかげで、具体的な協議から始められた。こちらのイメージを知らせ、作家側の懸念点について協議し、つぎの打ち合わせまでにさらにもんでいただくことになった。
夜、朝のオンライン会議で撮影小道具のリクエストの詳細について確認した同僚から、強度を考慮した造作物の提案図面があがってきた。私には十分に思える図面を作家に転送し、今日は終わり。

11月27日(金)

天気|くもり(雨)

場所|水戸

明日の休みまでに済ませたい仕事が気になって早めに目が覚めた。日曜日に控えている新作映画制作のためのオリエンテーションで、出演者である小学4年生の子どもたちとその親御さんに配布する撮影当日のご案内資料を下書きして、藤井さんにメールする。
午前は目下のTo Do リストを時計を気にしながら順番につぶし、昼休みに娘の授業参観へ。コロナ禍で密を避けるために授業参観も超短時間かつ入れ替え制。「おかあさん、きょうきてね」とまっすぐにこちらを見て伝えてきた娘、もちろん間違いなく行くよ。行くと、時間割が変更されて、図工の授業をやっていた。学校の教室で過ごす娘の姿はいつもとはちがってどこかよそ行きで、でも友だちと楽しそうにやっている様子を確認して職場に戻る。
午後は、2月からの展覧会の会期中に行う関連プログラムである防災ワークショップと、次年度事業のための助成金申請について同僚と打ち合わせ。残りのタスクは週明けに。

11月28日(土)

天気|晴れのち小雨

場所|水戸

休日の今日は、娘のピアノのレッスンに付き合いながら茨城県内のキャンプ情報誌を読む。そもそも防災を意識してアウトドアに興味を持ち始めたが、コロナ禍に見舞われ、比較的安心して楽しめるレジャーとして、たちまち世間のキャンプ熱は沸騰。それに後押しされるような、されないような感じで、キャンプデビューを果たしたのが今年の夏。つぎに行ける日を楽しみに、県内のキャンプ情報をチェック。
そのあとに行った皮膚科が激混みで午後まで待つというので、いったん家に帰り、持ってでかけるはずだったお弁当を庭で家族と食べる。お日様があたると暑すぎるほどの日和。その後皮膚科に戻るも、想像以上に時間がかかり、待っている間に空がグレーの雲に覆われてめっきり寒くなった。予定を変更して、外遊びを断念して温水プールへ(月曜日の息子の念願が叶ったかたち)。子どもたちは身体を動かして遊ばないとストレスがたまって、そのストレスが暴発する生き物だなと、のびのびと水に浮かんでいる彼らの様子を見てつくづく思う。今年はコロナで学校も保育園もプールが中止になったので、泳ぎの練習なんてほとんどできていないのに、いつのまにか泳ぎが上達している。縄跳びもそうだったけど、急にできるようになる瞬間というのが、子どもにはあるものだ。
夜、明日のオリエンテーションの流れや配布資料の最終確認でメール。

11月29日(日)

天気|晴れ

場所|水戸

さて、今日は例のオリエンテーションの日。藤井光さんの新作制作のために、29名の出演者とその親御さんを迎え、コロナ対策として午前と午後の2回に分けてオリエンテーションを実施した。初めての顔合わせなので、出演する子どもたちも緊張していたが、藤井さんは小学生にも伝わる言葉を選んで、難問である「差別」というテーマに作品を通していかに向き合っていくか語りかける。演技練習を含めたワークショップさながらの2時間のオリエンテーションを、子どもたちは見事な集中力で全うした。演技経験なしの彼・彼女らが、本番、どのような様子を見せてくれるか楽しみでならない。そして、何より無事に撮影の日が迎えられ、その後も何事もなく過ごせることを祈ってやまない。
会場の撤収を終えてメールを見ると、展覧会ポスターのラフ案がデザイナーの加藤賢策さんから届いていた。同僚とラフを見ながら意見交換。だいたい意見ができったところで返信する内容がおのずと決まった。
ところで、新作が産声をあげる現場にはこれまでもときどき携わってきたが、展覧会をつくるのとはまた異なる緊張と興奮、歓びがあることを今回の現場で改めて実感した。制作の一端を担うことには当然責任が伴うが、責任はスリルへと化学変化する。今日のオリエンテーションに立ち会って放出したアドレナリンを抑制しながら休息をとるのが大事なのはわかっているけど、今日はなかなか寝付けそうにない。

特集10年目の
わたしたち

震災後、地図を片手に
歩きはじめる

1月公開