高野信也
ガソリンを買いに行った
並んで ならんで 待って まって
ガソリンの減りを気にしながら いらいらしていた
どうして こんなにたくさんいるのかと
自分もそのひとりのくせに
ただ 責めながらまっていた
見えてきたのは 開けない言い訳など
山ほどあるはずの 少し傾いた
ガソリンスタンド
スタンドの人は 雨でびしょぬれになりながら
一台3000円ぶんしか
いれてあげられません
すみません と
頭を下げた
あさから何百台も ガソリンを入れ続けながら
そのひとは
すみませんとわたしに言ったのだ
すみませんと いったのだ
すまないのは わたしなのに
ヒトを責めながら待った果てに
ほんとうの ひとの尊さに出会った
入れてもらったガソリンは
20.2リットル
地震の前と同じ値段だ
詩人をやっていますので詩でお伝えします ただあの風景を忘れたくないとそう思いました
高野信也
詩人をやっていますので詩でお伝えします ただあの風景を忘れたくないとそう思いました