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特集10年目のわたしたち

こどもだったわたしは

震災から10年。あのときこどもだった人たちは、何を感じ、何を思っていたのでしょうか。うろたえる大人たちや変わってしまった風景のかたわらで、多くを語ることがなかった人たちは、成長の過程で自らの言葉を得たいま、何を語るのでしょうか。10年前こどもだった人たちに、アーティストの瀬尾夏美がインタビューをし、彼らの語りを書き起こします。

瀬尾夏美 《みんなで帰る》2019年

震災から間もない頃、「こどもの無邪気さに救われる」という言葉を幾度もききました。大災害の打撃で大人たちがうろたえる一方で、こどもたちはいつものように駆け回ったり、ときには大人たちを励ますような言葉を投げかけてくれたりもしました。
復興工事が落ち着き、あたらしい街並みが見えはじめた頃、少し成長したこどもたちは、「やっと遊べる」と言って、真新しい公園の遊具ではしゃぎまわりました。そのときようやく大人たちは、彼らがずっと何かを抱えたまま語らずにいたことに気がつくのです。
震災からの立ち上がりのさなかにあった10年間は、彼らにとっては、自身の成長の過程にあるかけがえのない時間であったと思います。身体が大きくなり、仲間ができ、知識を得て、さまざまな経験を重ねたいま、あのときこどもだった自分に出会い直しにいく。そこできこえる声を、その本人とともに新鮮に受け止めるようとするとき、震災という出来事を語るための最も大切な視点のひとつを、ともに見つけられるような気がするのです。

連載東北から
の便り