Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021

連載東北からの便り

10年目をきくラジオ モノノーク

第3回
2020年8月29日

話題
オープンニングトーク/世界の今日/こどもだったわたしは/あなたの“立ち上がりの技術”教えてください/わたしのレコメンど!/エンディングトーク

オープニングトーク

8月29日、「10年目をきくラジオ モノノーク」の第3回が放送されました。
前回放送から2週間。変わらずにパーソナリティは瀬尾夏美と桃生和成。東北リサーチとアートセンター(TRAC)からお届けします。

この間瀬尾さんは札幌へ、桃生さんは名古屋へと出張があったそうです。徐々に他の地域へ移動したりすることも増えてきましたね。それでは早速行きましょう!

世界の今日

本日のゲストは香港にあるアートスペースCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)の館長兼チーフキュレーターの高橋瑞木さんにお電話をつなぎました。高橋さんは2016年まで水戸芸術館現代美術センターで学芸員を担当されており、瀬尾とは2011年当時に、アーティストの高嶺格さんと一緒に東北沿岸部にリサーチにこられた時に会っているそうです。今日はそれ以来のお話ということで、少しドキドキしているという瀬尾。

高橋さんが館長を務めるCHATは40名近くのスタッフが務める大きな施設。工業地帯にあり、観光客はなかなか来ない場所なのだそう。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って現在は展覧会を感染者数の増減に合わせて開いたり、閉じたりを繰り返しているようです。デジタルコンテンツもつくってはいるけれど、直接アートに触れる体験の代わりにはならない、お客さんが入って初めて美術館も空気が流れ始める、とおっしゃっていたのが印象的でした。

最後に「日本を離れて香港に暮らし、客観的に日本を見る視点を得ると、日本は少し足踏みしているなあ、というのが率直なところだけれど、もっと震災があったという経験を、未来に活かすことができるのではないかなあと思っています」と震災10年に寄せて、いま思うことを語っていただきました。


高橋瑞木さんとオンライン中継

こどもだったわたしは

震災当時こどもだった人たちに、瀬尾がインタビューをし、書き起こした物語を朗読でお届けする「こどもだったわたしは」。朗読の演出は屋根裏ハイツの中村大地です。

今回お話を聞いたのは震災当時小学校5年生で、札幌で被災し、中学生の頃、仙台近郊に引っ越してきたという方。わたしも震災のことを話してもいいと思えたので、と語ってくださったそうです。

「こんなに怒りを話してくれた人に初めて出会った。中学生や高校生の時期、成長の過程でいろんなことに怒るということがあったと思うけれど、被災地域に暮らすこどもたちは「こども」というだけで希望や継承の象徴となってしまい、怒ることを許されなかったのではないか」と瀬尾。「こどもって色々考えてるし、こどもって意外とこどもじゃないですよね」と桃生が応答します。大人の巨大な善意を受け入れることを身につけている周囲のこどもたちと、それを受け取りきれない彼女の温度差が語られるドーナツの場面がとても印象的でした。


瀬尾夏美《雪の日のあの子に会いにいく》2020年

「雪の日のあの子に会いにいく」(作:瀬尾夏美、朗読:村岡佳奈)の音声、テキスト、ドローイング、執筆後記は「こどもだったわたしは」のページからご覧いただけます。

あなたの“立ち上がりの技術”教えて下さい

本日の“立ち上がりの技術”は、宮城県仙台市の公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事である奥野慧さんのインタビューを紹介しました。

大学生活を送っていた兵庫県にて、阪神・淡路大震災で被災したこどもたちの支援をきっかけに立ち上がったNPO法人ブレーンヒューマニティーで活動していた奥野さん。その知見を元に、東日本大震災発生からすぐの2011年6月からチャンス・フォー・チルドレンを立ち上げ、経済的困難を抱えるこどもたちにスタディー・クーポンを配布することで学習機会を提供し、支援されてきました。

立ち上げからの経緯を伺いながら、パーソナリティも含めて震災直後の仙台の様子を共有しました。インタビューの最後に、東日本大震災から10年が経って改めて感じることを教えて下さい、というパーソナリティの質問に対して「難しいですね」と笑いながら、「東日本大震災が起こったときは、勝手に自分の番だと思ったんですね。まもなく10年が経とうとしているなかで、同じように勝手に自分で動こうと思える人を育てると言うか、生み出すことはまだできていない、次の10年につながることがまだできていないなという思いがあります。現在うちの法人で働く人たちは全員ボランティア出身なのですが、そういうように、勝手に動こうと思った人たちが、連絡できたり、必要とされる場所につなぐ仕組みをつくったりできればなと思います」と応えてくださいました。


奥野慧さんに話を伺う

わたしのレコメンど!

本日最後のコーナー。みなさんの「レコメンど!」を募集しています。
今回は日替わりロースカツ丼さんの推薦でTwitterの種田山頭火bot(@santouka)を紹介しました。推薦した方にとっては、飲んだくれている山頭火の日記がタイムラインに流れてくることに時折救われるのだそうです。

どんなものでもいいので、皆さまからの応募お待ちしております。

ということで、次回は9月12日、21時よりお届けします。

ON AIR曲
■ イ・ラン「患難の世代」
■ ROTH BART BARON「Special」
■ GAGLE「うぶこえ(See the light of day)」

(執筆:中村大地)

特集10年目の
わたしたち