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連載東北からの便り

10年目をきくラジオ モノノーク

第6回
2020年11月14日

話題
オープンニングトーク/世界の今日/こどもだったわたしは/あなたの“立ち上がりの技術”教えてください/わたしのレコメンど!/エンディングトーク

オープニングトーク

11月14日、「10年目をきくラジオ モノノーク」の第6回が放送されました。
前回放送から再び1ヶ月。パーソナリティは瀬尾夏美と桃生和成。東北リサーチとアートセンター(TRAC)からお届けします。

瀬尾は奈良の大学生に呼ばれて、東日本大震災を題材にしたワークショップをしに行くそうです(瀬尾夏美「へんでふつう わたしたちの10年を話しあう」奈良県立大学)。震災10年目という節目、3月11日が近づくにつれて様々な場が、このラジオに限らず生まれてきていますね。

桃生がやっている東北復興文庫の第一冊目(亀山貴一『豊かな浜の暮らしを未来へつなぐー蛤浜再生プロジェクトー』)の情報も放送日にリリースとなりましたので、こちらもよろしければチェックしてみてください。

世界の今日

今回は、アメリカ・オレゴン州ポートランド州立大学経済学教授の伊藤宏之先生にお電話をつなぎました。桃生は2016年に参加したポートランドのまちづくりについて学ぶJaLoGoMaプログラムをきっかけにお会いし、その後は学生やポートランドのコミュニティの人とともに、被災地を訪れる活動など、関係が続いているそうです。

伊藤先生の暮らすオレゴン州は、3月下旬にはロックダウンの措置が2ヶ月ほど取られたそうです。アメリカ国内ではかなり感染者数の少ないエリアとのことですが、今現在の第3波では1日に1100人の感染者数が出て、また部分的なロックダウンが導入される予定だそうです。大学ではオンラインでの授業が中心であるにも関わらず学費は変わらず、経済的な困窮などから、先生の大学でも8%ほど学生が減少したそうです。

先日のアメリカ大統領選について「富める人とそうでない人との分断が一層深刻なものとなっている」など、アメリカに暮らす一人として、経済学者としての視点でコメントをいただきました。ぜひ聞いてみてください。


伊藤宏之先生とオンライン中継

こどもだったわたしは

2ヶ月ぶりとなった、“こどもだったわたしは”では、瀬尾が震災当時小学生、特に11歳だった方に当時の記憶を聞き、物語にしています。今回は宮城県の角田市に暮らす方へのインタビューを物語にしました。タイトルは「毛布から抜け出す」。

震災直後は、「なんで大人たちは終わったことを引きずっているのか腑に落ちなかった」と思っていたという彼女は、昨年の台風でそれまで暮らしていた自宅を手放さなくてはならなくなった体験を通じて、東日本大震災の被害を受けた人の気持ちが少し理解できたかもしれない、と感じたそうです。


瀬尾夏美《毛布から抜け出す》2020年

「毛布から抜け出す」(作:瀬尾夏美、朗読:中野志保実)の音声、テキスト、ドローイング、執筆後記は「こどもだったわたしは」のページからご覧いただけます。

俳優の中野志保実さんの朗読を受けて、取材の様子を語る瀬尾と、受ける桃生。その後に流れたコダハルカさんの「生きて」という曲は、2018年に、小森+瀬尾の作品「二重のまち/交代地のうたを編む」にコダさんが出演した際、陸前高田で2週間の滞在をしたことをきっかけに作られたもの。流れも相まって、より一層染みる素敵な歌でした。

あなたの“立ち上がりの技術”教えて下さい

本日の“立ち上がりの技術”は、NOOKの佐竹真紀子さんを迎えて、宮城県在住の民話の語り手であり、やまもと民話の会を立ち上げた庄司アイさんの立ち上がりの技術について紹介しました。

お母さんや身近な大人たちが日常の中で語る民話を、耳で聞きながら育ったアイさんは、東日本大震災によって山元町の自宅が流されてしまいます。「形あるものは全てなくしたけれど、気がついたら胸に民話が残っていた」というアイさんは、やまもと民話の会のメンバーと共に、震災の語り継ぎに取り組みます。その聞き書きは『巨大津波―語りつぐ-小さな町を呑みこんだ』として出版されていますので、よろしければチェックしてみてください。

オンエアーにあわせ、素敵なハガキもくださったアイさん。民話の語りのように、思わず引き込まれてしまう力強い声に耳を傾けました。


収録の背景には佐竹真紀子さんの絵画が展示されていました。TRACでは佐竹さんの個展「波残りの辿り」が12月27日まで開催中です。

わたしのレコメンど!

本日最後のコーナー。みなさんの「レコメンど!」を募集しています。
今回は八木まどかさんから、自身の母である房内はるみさんの詩集『窓辺にいて』を紹介していただきました。
「表現だなんて大それたことではなくて、道に咲いている一輪の花を見て“ああ、きれいだな”と思うような自分の気持ちを、ただ大事にしたいだけよ」と語るお母さんの言葉が胸にあったという八木さん。お二人の関係も伺える詩のレコメンド、ありがとうございました。

ということで、今回も盛りだくさんの内容で2時間お届けしました。
次回は11月28日、21時よりお届けします。
手記の応募も引き続きお待ちしております!

ON AIR曲
■ cat or die 「ume_plum」
■ コダハルカ 「生きて」
■ GAGLE 「FLOW」

(執筆:中村大地)

特集10年目の
わたしたち