Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021

連載東北からの便り

2020年リレー日記

2020

9

9月14日-20日
遠藤一郎(カッパ師匠)

9月14日(月)

天気|晴れ

場所|大分

3日ほど妻が家を空けている間に、ケーキとアイスを食べまくってやったらまんまと体調を崩してね。3日間ぐったり眠りこけてたのよ。まあ、胃腸がやられたよ。ウンコもかたくなってやばかった。けど久々にセルフ腸洗浄もやったし。コレなかなか非現実的な感覚が味わえるから好きなんだよね。かといって用もないのコレやりだしたら、なんかアウトな気がするし。だから今回できてどこか嬉しい気分。
わりかしずっと雨が降っていてちょうどいい気分だったが、久しぶりに晴れた今日はそれはそれで素晴らしい気分だよ。朝から『未来へ丸』の船舶係留継続の手続きに役所へいってきた。未来へ丸は、3.11のあと『未来へ号』をワゴンからバスにして東北と全国を走りまくって、その走ったGPSの軌跡で列島に文字を描くという「RAINBOW JAPANプロジェクト」の第3段階として、陸だけでなく海にはみ出してでっかい文字をつくってやろうという壮大な企てのもと造船してしまった黄色い船。おととし東京のイベントで一発やらかしてエンジンがブッ飛んで、今は大分の港に置いてある。船出したってだけでなんとも感動的なたまらない充実感を得た。
まあそれはそれとして、未来へ丸をつくってた2013年くらいから原因不明の体調不良に襲われたこともあり、その頃に内部被曝検査を受けてみたら3.7マイクロシーベルト。ガッツリ内部被曝よ。当時は微生物に助けてもらおうってんで、手作り雑草酵素を作って、スギナを大量に使って常在菌で発酵させたドロドロの液で内部被曝を1.4マイクロシーベルトまで下げた。奇跡的。のちにメタトロン周波数測定装置で全身スキャンしたところ、甲状腺がとても悪くなっていたので、あの原因不明の不調はやはり溜まった放射能が原因ってことをつきとめて、AWGで放射能除去周波数を3時間程かけたらみるみるジリジリ反応した。ああ、よかった。いろいろあって充実した人生だな。
だからとにかく久しぶりに晴れたので、家に帰って柿渋染めの手ぬぐいを作った。柿渋はカキタンニンって天然の除菌抗菌作用があるから、コロナで騒いでる人間にはちょうどいいってんで最高のアイテムとなろう。秋のイベントに出そうと思ってる。旅する服屋さんをやっている仲間が温泉染めをやっているので、柿渋と温泉染めで手ぬぐいを作ることにしたのだ。染めてみると面白いのなんのって、ついでに汚れたシャツなんかも染めちゃったりしたら凄まじくかっこよくできたので、たいそう気に入った。
巷で流行りの天然酵母パンの長老的存在の「楽健寺パン」がたまたま家に届いたので、やられた胃腸を整えるために食べた。さすがにうまい。ととのった。

9月15日(火)

天気|晴れ

場所|大分

まだケーキとアイスの食べ過ぎ不調から復調しきっていなかったので、昼からはこんにゃく療法をやったった。こんにゃくを熱々に茹でてタオルでまいて、肝臓、丹田、腎臓にのっけて寝るだけのシンプル行為だが、すごすぎる蘇生力。体をどんどんあたためて臓器と血流を活発化させ、まあ、だいたいのことは良くなる。とりあえ全員知ってたらいいと思う。これほんとに効くし。知らなきゃ人生損レベルよ。とにかくこんにゃくは熱いからさ、ナメてかかると大ヤケドよ。
東城百合子の自然療法はいろいろと常軌を逸してて素晴らしい価値観だらけなのだが、最近はその中でもトップおぶキチガイの砂療法にはまっている。砂に2~8時間埋まるという単純療法だが、これが凄まじい。体に溜まってる汚水やらケミカル毒やら重金属やら毒ガスやらが信じがたいほど排出される超お得行為。1年放置した花瓶の水を想像してみてよ。体も同じよね。夏の間しかできないし、今夏は3回埋まって毒をだした。砂に埋まると特に女性が埋まった砂からは今まで蓄積されているシャンプーや化粧品やらの化学物質が汗やガスとして放出されて、生ぬるく腐ったようなにおいが充満する。それ吸い込むと吐き気する。ただの毒でっせ。これも人生やっとかにゃ大損レベル。とにかくいろいろ非常識で面白いので、最近は仲間や生徒達を全国各地で埋めまくっている。砂にね。実際もれなく全員が効果絶大だから、マジで。
それはそうとつい最近、生徒の一人から福島のその後を知るために潜入調査に行って来たとのメールが来た。この内容がヤバイ。もう9年も経つので今は話題にもニュースにも出なくなっているけど、もともと消費者には何も知らされてこないけど。そういうわけでとりあえずは『17都県放射能測定マップ+読み解き集 増補版』を注文してたのがちょうど届いたのでさらっと目を通したが、これはすごい情報量だ。時間ができたら読もう、っと。

9月16日(水)

天気|曇りと雨

場所|尾道

いや~~~~~~~~。いやいやいや。今日は移動だな~~~。15時ナウ。5時から走ってるから、もう10時間くらい走ってるねえ。今のうちに仮眠して深夜割りと深夜ドライブ特有のおとずれ合戦にそなえる作戦。曇りもよう。青空はそりゃもう、そりゃいいけどもね、なんだかんだこんな曇り空がいいんだよねえ~~。はっきりしないとこが。わくわくするねえ。雲の輪郭とか平面とかその向こうとか。螺旋とか。運転してる時はだいたい空ばっかみてる。道とかあまりみてない。みるべきだと1ヶ所しかみえなくて事故る。ボンヤリというかなんというか、みるともなくみてる。そうするとみるべくしてみえるから事故らない。フロントガラス越しの景色って5分の4くらいは空だしね。ドライブ史上最高の時間帯は4時~5時くらいの暁や曙あたり。ここがもう本当にたまんない。ギンギンにキテるのよ。朝日が豪雨が霧が鉛雲が熱風が速度が音量が三日月がドライバーが互いの感性がみるみる重なって互いの存在がみるみる重なって在るだけの状態が完全に顕在してくる。ドライバーにとってのヤツラとヤツラにとってのドライバーは呼応しあって反発しあってやらかしあうのよ。これがドライブ史上最高の醍醐味。これが楽しいせいで夜行性少年になったようなもんで。ずっと前からヤツラって呼んでる。富士山を毎日みながら登校してる頃からヤツラはいて、車上生活がはじまったらヤツラが復活した。その残像を消さずにみたくて連凧をあげはじめた。震災後はとにかく凧をあげまくった。東北でも東北でなくてもあっちこっちで。とにかく凧をあげまくった。凧をあげりゃいいと思ってた。いろいろいろいろいろいろありすぎて。いろいろいろいろあるけど、凧を空にあげればいいんだと。あげてあげてあげて、あの空を知って、がれきの空に無我夢中だった。凧をあげまくった。凧をあげまくった。凧をあげまくった。

9月17日(木)

天気|晴れ

場所|静岡

今日は御殿場の実家っす。バスを停められない。いつもの富士のすそのに適当に停める。その前に、櫻道布団店で「お日様の力」を買った。次に実家に寄るときに絶対に買おうと思ってたんだよ~~。この布団がもう~~~最高でさ。トルマリンの遠赤効果マジやばい。体があったまって気持ちがいい。ぜんぜんちがう。ぬくいのなんのって。布団でこんなにちがうもんかね。ってかんじ。やっと気づかされたよ。人生の3分の1は睡眠て言葉に洗脳されてほんとよかったよ。睡眠て大事だなあ~~~。
帰ったら父ちゃんが猛然と家の片付け始めてんのよ。2階にたまったおれの荷物。マズイよ。土石流のように埋め尽くされたおれのお宝共に半ギレだよ。たしかに2階から床ぬける恐怖感とほこり。しかたないよ。ズタ袋に夢がつまってんだよ。ぜんぶ燃やす。

9月18日(金)

天気|晴れ

場所|東京

いやはや。とりあえず手前の港北パーキングエリアで仮眠しながら深夜割り時間帯を待つ。この時間の主要エリア付近のPAやSAはトラックや車中泊がひしめきあっていてなかなか独特な文明が形成されてて、なかなか楽しいのよ。とくに大型車両系はもはやデフォルトの駐車枠からあふれるので、それぞれが近隣との事故らない絶妙な距離感をじつに工夫を凝らして保ちつつひしめきあう。おれたちゃ数センチ単位で運転してるし、この絶妙な距離感がたまらん。それわざとか?! ってヤツもいて楽しい。遊びもある。ほとんど暗黙の了解ってやつで。暗黙のっていう感覚の領域がヤバイ。べつに会話はないし、ルールとマナーはあるが必要に応じて切り崩し調整しあう。それもお互い了解しあってるしね、コミュニケーション無しで。言語と法律も無しで。出発するトラックはカーテンを開けてから出発前の用をたしにいって暗黙に知らせてくる。距離や細かい様子で意思を伝達しあってるのよ。たがいに迷惑をかけるのがきらいで、仮眠が大事なのわかってるから余計な馴れ合いはしない。感性と観察で、個人でありながらゆるやかにおのずと重なり成る文明。すでにある。
いやあああああああ~~~~~~~~。しかしやれやれ。今から仮眠して5時に起きて東京だし。はやく寝りゃいいのに、なかなか寝ない。なんだかんだボンヤリ起きてる。これなんなんだろうね。このマドロミがたまんねんだよな。自由と無視というかなんというか、だから、もう寝ろっつーーのに。なんでもいい。なんにもどうでもよくて、寝ない。眠いのにわくわくしやがる。そして寝る瞬間の心地よさ。やたら胸に染みてくる充足感と幸福感。やっぱ、マドロミ、やめられませんな。

9月19日(土)

天気|曇り

場所|長野

早朝に生徒達と神田集合して長野。まずは今のところ出土してる中では日本一の石棒。縄文の。スバラシイ、スッッッバラシイにつきる。日本一の石棒なのに博物館ではなく田園のあぜにそそり立っている。物凄いハがギンギンに響きあってとんでもない色即是空。石棒に抱きつく女生徒達。誰かれ構わず笑えるったらありゃしない。石棒も誇らしげじゃないか。楽しい。連休だってのにわれわれ以外は誰もいない。全国の石棒ファンはなにをやっているのか。
未発掘内山遺跡、なぜかやたら楽しいご当地スーパー、ツルヤ。井戸尻考古館の香呂型土器。まったく別の知覚。八島湿原の縄文スーパーアリーナにて夕暮れどきの4分33秒日抱御霊鎮め。みるみる自意識がすっ飛んでいく。自分の感性は鎮まり、そこに在る感性に重なっていく。石棒のハに重なって響きあっていく。古代縄文スーパーアリーナのハに重なって響きあっていく。時空をこえる大歓声があちこちで轟いてるのよ。体の芯の火と囲む渦がクロスして熱い熱い。これにて普通に余裕。戦わない、所有しない、見せびらかさない、その必要も概念すらもまったくない。ハッハッハッハッハッ。

9月20日(日)

天気|曇り

場所|飛騨

朝から寒かった~~~~。まだ9月半ばってのに長野の山ってやつはまったく。蓼科山の山頂は、ありゃなんだ。その昔どっかの男が蓼科山山頂の穴から落ちて地下都市で暮らした後、龍になって浅間山の麓の池から出てきた、らしい。五井野正は晩年に白樺湖と蓼科山周辺に拠点を構え、曰くこれからこの地が上と中と下を往来するメガステーションになるという。去年唐突に死んだらしいけど、ついに肉体を置いて下か上にでも移動したのかもね。GOPプロシジャー飲まなかったのかな。それにしても、あの山頂はたしかにステーションに相応しい。というかまあ、なんというか、露骨にステーションかもね。銀閣寺の向月台プリン、鞍馬山の六百万年前に降り立った宇宙船プリン、蓼科山の頂上プリン。くぼみ。月。突拍子もないはずなのにね、複数の知覚が、交差してくると、まあ、露骨だし。しかたない。結局はバカバカしくふざけて、ゲラゲラ笑って、空気を目一杯すって~~~はいて~~~、ボンヤリしてるのが最高潮なのよ。体が冷えないように寒くないように。怪我をしないように、ゆっくりでいいので。
午後は諏訪湖の天竜川入口の噴水。これは本当にオモチロイ。大好きだね。誰もみてない。いつでも誰もみてない。1時間ごとに10分ブチ上げる。これぞ、まさに、ブチ上げ。諏訪湖に上がる一直線の巨大チンコ。湖を受け皿に、天竜川の根元に上がる諏訪の水龍の巨大勃起。まさに、昇り龍。誰もみてない。おれたちは七輪で餅を焼いて、醤油にくぐらせ海苔をまいて、適当に食って、適当に転がって、一時間に一度の大スペクタクルを堪能した。ここに在り合うことが旨すぎる。結局たまんねえ。アゲアゲよ。
毎朝お茶おじさんがお茶を沸かしている。日替わり。今朝はビワ茶だった。昨日はほうじ茶だった。明日はスギナ茶だろう。

バックナンバー

2020

6

  • 是恒さくら(美術家)
  • 萩原雄太(演出家)
  • 岩根 愛(写真家)
  • 中﨑 透(美術家)
  • 高橋瑞木(キュレーター)

2020

7

  • 大吹哲也(NPO法人いわて連携復興センター 常務理事/事務局長)
  • 村上 慧(アーティスト)
  • 村上しほり(都市史・建築史研究者)
  • きむらとしろうじんじん(美術家)

2020

8

  • 岡村幸宣(原爆の図丸木美術館 学芸員)
  • 山本唯人(社会学者/キュレイター)
  • 谷山恭子(アーティスト)
  • 鈴木 拓(boxes Inc. 代表)
  • 清水裕貴(写真家/小説家)

2020

9

  • 西村佳哲(リビングワールド 代表)
  • 遠藤一郎(カッパ師匠)
  • 榎本千賀子(写真家/フォトアーキビスト)
  • 山内宏泰(リアス・アーク美術館 副館長/学芸員)

2020

10

  • 木村敦子(クリエイティブディレクター/アートディレクター/編集者)
  • 矢部佳宏(西会津国際芸術村 ディレクター)
  • 木田修作(テレビユー福島 報道部 記者)
  • 北澤 潤(美術家)

2020

11

  • 清水チナツ(インディペンデント・キュレーター/PUMPQUAKES)
  • 三澤真也(ソコカシコ 店主)
  • 相澤久美(建築家/編集者/プロデューサー)
  • 竹久 侑(水戸芸術館 現代美術センター 主任学芸員)
  • 中村 茜(precog 代表取締役)

2020

12

  • 安川雄基(合同会社アトリエカフエ 代表社員)
  • 西大立目祥子(ライター)
  • 手塚夏子(ダンサー/振付家)
  • 森 司(アーツカウンシル東京 事業推進室 事業調整課長)

2021

1

  • モリテツヤ(汽水空港 店主)
  • 照屋勇賢(アーティスト)
  • 柳谷理紗(仙台市役所 防災環境都市・震災復興室)
  • 岩名泰岳(画家/<蜜ノ木>)

2021

2

  • 谷津智里(編集者/ライター)
  • 大小島真木(画家/アーティスト)
  • 田代光恵(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 国内事業部 プログラムマネージャー)
  • 宮前良平(災害心理学者)

2021

3

  • 坂本顕子(熊本市現代美術館 学芸員)
  • 佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)

特集10年目の
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