Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2020

連載東北からの便り

2020年リレー日記

2020

7

7月13日-19日
村上 慧(アーティスト)

7月13日(月)

天気|梅雨の見本のようなしとしと降る雨。昨日は晴れて暑かったのだけど今日は涼しい。最近買った、というか店員にレジで「あれも似合ってましたよ」と言われて買わされた厚手のボーダーのシャツを初めて着られる気温

場所|東京都三鷹市中原のアトリエ

アトリエの庭で育てているじゃがいもが、昨日の高温のおかげでようやく枯れ始めた。次に晴れが3日続いたら収穫できそう。晴れの日が続いた後でないと、じゃがいもは良くないらしい。
9時前に目が覚め、家を出て、3日前と同じように駅の南口から入り、通勤の人々を流しながら売店でタバコを買い、北口から外に出て9時半にはアトリエにいた。それから1時間くらい小説の続きを書いた。中学生のときのことがでてきた。ほうれん草炒めと目玉焼きと食パン半分のご飯。それから14時45分まで書く。2,200字。
その後金沢21世紀美術館での展覧会のための作業を始める予定だった。一昨日、大変なミスに気がつき、300個も作ったファイルが使えないことがわかった。一からやりなおし。と思っていたのに全くその作業に集中できず、1時間ほど昼寝をして、起きてからほうれん草と豚肉の炒め物を、近所の石坂製麺で買った生ラーメンに入れて、夕食(昼食?)。そのあとでまた続きを書いてしまった。1,000字。
なんか今日はずっと文を書いている日になったな。展覧会のための作業っていうのは、いままで発泡スチロールの家と共に歩いたルートをイラストレーターを使ってGoogle Earth上でひだすらなぞるという鬼のような作業なのだけど、どうもやる気になれず。最近Radiotalkという、誰でもラジオができる音声配信サービスを知り、そこで今年就職したばっかりの女の人が飲み会帰りに「今日の飲み会の、職場の先輩たちの話、本当にしょうもなかったわ。あんな人たちと働いてたのか。はあ」みたいな話を歩きながらしてる回がものすごく面白くて、飲み会とかやりたいなあ。

7月14日(火)

天気|曇りなのか? 晴れ間も見えていたような気もするし、夜は湿度があまりなくて気持ちよかった

場所|新宿駅からつつじヶ丘駅に向かう電車の中

少なくともこの車両は全員マスクをしている。窓も開いていて、ゴロゴロロという音が響いている。席はそれぞれが隣に一人分開けた状態で満席くらい。立っている人も2人。いま24時35分。すこし酒が入っている。と言っても缶ビール3、4本分くらい? 友人に誘われて東雲に行き、ゲームをやった帰り。ゲームと言っても液晶を使うものではない。
今日は9時半くらいに目が覚め、1週間くらい前に作ったままにしていた冷蔵庫の昆布出汁をつかって味噌汁を作って食べた。乾燥椎茸と玉ねぎとわかめ。それからアトリエに行き、昨日の続きを書く。途中、涼ちゃんがおにぎりを作って差し入れてくれる。めちゃうまい。
12時過ぎくらいに出かけ、葛飾区役所にいって祖父の戸籍謄本を取った。家系を辿りたいという旨を窓口で伝えたら、「北海道の広尾町役場に郵送でお願いすれば曽祖父の戸籍が取れます」と、封筒やら役場の住所と電話番号やらをいろいろ準備して丁寧に教えてくれた。役場の戸籍住民課の人というのは、なぜこれほどまでに丁寧に対応してくれるのだろう。役場に勤めているという理由だけで、全ての人間に対して優しくするべきなのか?
自分の家系は、戸籍を請求すれば150年くらい前までは辿ることができる。僕はとりあえず父方のじいちゃんのじいちゃんまでは辿ることにする。ひい爺ちゃんとひいひい爺ちゃんが淡路島の生まれということはわかっているが、淡路島のどこなのかが知りたい。爺ちゃんに聞いてもよくわからない。もしかしたら洲本かもしれないという期待がある。ひい爺ちゃんは若い時に淡路島から北海道の日高に行ったのだけど、そのころ稲田騒動という事件があり、洲本から北海道の静内に多くの人が開拓民として移住した。これは小説家の池澤夏樹さんの先祖が辿った道で、もしかしたら僕も同じルーツかもしれない。いずれにしてもいつか訪ねてみたい。そのためにまずは、広尾町役場に戸籍の照会を頼まなくてはいけない。

7月15日(水)

天気|しとしとと1日中降り続けている雨。ほとんど止まなかった

場所|東京都三鷹市中原のアトリエ

気がついたら24時半を過ぎている。最近、時間の進み方がすごく「まだら」だ。1時間半が一瞬で過ぎたかと思えば、電子レンジの10秒がめちゃ長く感じたりする。絵を描いているときや、展示のプランを作っているときや、映像を編集しているとき、本を読んでいるときなどは、だいたい同じスピードで過ぎるのだけど、メールを含め「文」を書いているときに、自分としては数分前に時計を見たつもりが、1時間経っていたというような奇跡(時々悪夢にもなる)が時々起こる。
いま出ている『群像』の初夏短篇特集がとても面白い。多くの作家が新型コロナウイルス以後の状況を盛り込んでいて、小説家という人種が持つ手数の多さを思い知った。特にいしいしんじさんの『息のかたち』という、ある日金属バットが頭に直撃したら、人が吐いた息の形と色が見えるようになってしまった女子高生の話が良かった。終わり方がとても良かった。
と、書いているうちにもう13時になってしまった。

7月16日(木)

天気|夜まで曇りだという予報だったけれど、本当に24時まで曇りだった。それから雨

場所|東京都三鷹市中原のアトリエ

朝9時過ぎには起きて、10時過ぎにアトリエに着く。それから1時間ほど書く。文字数は見ていない。パンと目玉焼きの朝ごはんを食べて、また少し書き、昼からすこし金沢の作業をしようと思って色々出すが、先方に確認しないとわからないことが一つ判明し、手が止まる。
13時からインタビューを受ける。大学の友人の島田くんからの依頼。終わったら3時半になっていた。
「もうお金も仕事もなくなったとき、最悪どうするか?」
という話題になる。インタビュアーは、Uber Eatsをやればいいかなと言っていた。僕は、昔奈良で林業をやってるおじさんに「困ったら山谷か寿町に行け」と言われてから、山谷か寿町に行こうと思っているのだけど、一度山谷の仕事の仲介所に行ったときは入る勇気がなかった。本当に困ったら、あの建物に入ることができるんだろうか。
そのあと「餃子の満洲」に行って回鍋肉とご飯とビール。それからアトリエで少し寝てしまった。そのあと一つだけメールを送り、19時半ごろに涼ちゃんは自転車、僕はキックボードで吉祥寺へ。島田と3人で「おっちゃんの台所」という店で飲む。途中、亀ちゃんも合流。24時前には帰宅。

7月17日(金)

天気|最近ずっと肌寒いくらいの気温。しとしと雨。夕方までは降っていなかった

場所|東京都三鷹市中原のアトリエ

朝8時前に起きてすぐに出かける。駅のパン屋でベーコンエッグなんとかというパンと小さなパイを買い、8時半にはアトリエに来た。南瓜の雌花が二つ咲いていたので受粉させる。雨の日でも受粉していいんだろうか。アトリエに着いたはいいけど眠かったので少し寝た。10時過ぎに起きて買ったパンを食べて書き始める。途中、冷蔵庫の食パンを焼いて、蜂蜜とクリームチーズをのせて食べる。パンばっかり食べている。あと庭で取れたミニトマト二つも。それから15時半過ぎまで書く。21,300字。
そのあと電車で早稲田に行ってカレーを食べて帰ってきて、夜は島田くんとの交換日記をnote上で公開作業を行う。noteという文化があることを知る。この日記もそうだけど、最近日記をリレーしたり交換したりするのが流行っている気がする。mixiとか久々にやりたい。mixiの日記、消さなければよかった。いま読んだらさぞ面白いだろうに。
それにしても、最近電車の中でマスクをつけていない人をほとんど見なくなった。そのうちつけてないやつは人間ではないくらいの扱いになりかねない。「え! ちょっとあなた! マスクは?」「おい! こいつマスクをつけていないぞ!」「え! マスクをつけていない人がいるの?」「なんだって! マスクをつけていない人がいるだって?」

7月18日(土)

天気|夕方くらいまで降ったり止んだりしていた雨が夜には上がって、水気を少し含んだ空気の中を歩くのにはとても気持ちよい気候

場所|東京都三鷹市中原のアトリエ

夜アトリエのメンバー4人でバーベキューをして酒を飲み、心地よく家に帰り、歯を磨いてシャワーを浴びて寝た。

7月19日(日)

天気|晴れ、久々に晴れた。夜まで降らず

場所|東京都三鷹市中原のアトリエ

洗濯物を干してから、10時半くらいに家を出て、駅のパン屋でドーナツを買ってアトリエへ。野菜ジュースとドーナツと、昨日見つけた駄菓子屋で買ったきなこ棒を食べたり、冷やし中華を挟んで、小説を24,600字まで書く。夜は金沢の展示プランを考える。沼に嵌ってしまった。200枚のサブロク板を配置するパターン。多すぎる。
庭の南瓜がなかなかうまくいかない。いくつか見込みのある奴もいるけど、長い梅雨でやられてしまっている。同じ理由で全国的に南瓜が不作らしい。全国の南瓜農家の苦労が、うちの庭でも感じられる。すごいことだ。この南瓜は、普通にスーパーで買って食べた後の南瓜の種を植えたらでてきたものだ。発芽率は8割くらいあるんじゃないか? 狩猟採集民族だった人たちが、種を植えて作物を増やす方法を発見したときの衝撃を追体験しているような気がする。

特集10年目の
わたしたち

震災後、地図を片手に
歩きはじめる

12月公開