Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021

特集10年目のわたしたち

あのとき あのまちの音楽
から いまここへ

第1回
2017年〜2018年の報奏

ラジオ下神白の第1回目のオンライン報奏会は、プロジェクトの「あらまし」をお伝えすることに主眼を置き、ドキュメント映像(撮影/編集:小森はるか)の上映、そして第1集から第5集までのラジオCDをダイジェストでお届けしました。記録写真をお見せしつつ、ディレクターのアサダワタルによる経緯の解説、そして住民さんのまちの思い出とともに彼ら彼女らのメモリーソングを紹介。曲はイントロのみを流し、みなさんの想像力もお借りしながら下神白団地の日常に思いを馳せていただくよう展開しました。

また、現地スタッフの鈴木詩織がレポーターとなって、住民さんとのライブ中継も。浪江町ご出身、4号棟在住、御年96歳の髙原タケ子さんとつなぎ、団地での生活のこと、ラジオ下神白にかかわってくださり思い出した学生時代の記憶や、当時の馴染深い音楽のエピソードを聞かせていただきました。

髙原タケ子さんとオンラインでつなぐ

このオンライン報奏会と並行して、現在団地では直接訪問できない状況を鑑み、アサダが東京にいながら、詩織さんはじめ現地スタッフと連携してのオンライン訪問を定期的に実施中。全国に緊急事態宣言が発令されて以降、住民さんと「どうつながり続けるか」という議論をプロジェクトチームで話し合ってきました。

集会場やお宅に直接訪問して、お話を聞き、好きな音楽も聴いて、そしてラジオをつくり、そのラジオをほかの住民さんに聞いていただく。そして、一人ひとりの住民さんが「被災者」ではなく「個人」として浮かび上がってくる。そうして、つながり直す。出会い直す。そんなことを少しでもできたらと思い、やってきましたが、面と向かって会えないのならどうすればいいのでしょうか?

単にオンラインに切り替えればいい、と割り切るには難しく、とりわけご高齢の方が多い現場ゆえに、やはり直接会うことの力は大きい。しかし、一方でこうも感じます。ラジオという「メディア」をつくってきたプロジェクトならではの、つながり方の発明はまだまだあるはずだと。

キーになってくるのは、東京などの離れた地域にいるからこそ培われる「想像力」をバネにした活動を展開することだと思っています。

12月27日(日)に開催予定の第2回目では、2019年の夏に結成した、ラジオ下神白プロジェクトのもうひとつの顔、「伴奏型支援バンド(BSB)」 の活動を軸に、トークと演奏をお届けする予定です。

コロナ禍ゆえに、離れていて「会えない」という現実に対する「表現=アプローチ」が、より切実さを持って浮かび上がるかもしれません。どうぞご期待ください!

(執筆:アサダワタル)

連載東北から
の便り