Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021

連載東北からの便り

2020年リレー日記

2020

9

9月28日-10月4日
山内宏泰(リアス・アーク美術館 副館長/学芸員)

9月28日(月)

天気|快晴

場所|宮城県気仙沼市某所

今日明日は休館日。明日は期限が迫っている仕事をやる予定だが、今日は気晴らしに釣りをした。妻は振休で休みだと言うが今朝まで知らなかった。
23日に購入した新しい竿とリールの具合を実釣で試すのが目的で、釣果はあまり期待していなかった。最近は坊主続きだったのでどうせ釣れないだろうと思っていたが、予想外にサバが3匹釣れた。
時合が来る直前、どこからかやってきた爺さんに「釣れるか?」と話しかけられた。釣れないと答えた。そして時合が去るとサバの群れと共に爺さんも去っていった。あれはたぶん恵比寿さんだったのじゃないか。
震災復興事業のせいだと地元民は言う。「かさ上げした土砂の流入や未だに終わらない護岸整備、防潮堤建設。そのせいで磯がダメになり、根の魚がいなくなった。それに加えて海水温の上昇など悪条件が重なっている……」、その通りだと思う。
今日はサバをさばいて塩ゆでにした。どれも25㎝弱のコサバなので、まぁ、缶詰の代わりにでもしようと思う。

9月29日(火)

天気|晴天

場所|宮城県気仙沼市某所

今日は予定通り午前中から仕事場に入ってもろもろの仕事をした。妻は今日も振休だというが、それも聞いていなかった。多少ごねられたが妻も昼前には家を出て仕事をしに行くというので、こちらも予定通りにさせてもらった。
市立病院看護学校の期末試験の採点をしなければならない。10月7日が提出期限で、結構余裕があったはずだったが、その余裕分を9月の議会対応で全てそがれてしまった。それと9月26日にオープンした特別展「伝えたい伊勢湾台風の教訓〜巨大化する台風に備えて〜」の展示作業や取材対応で、だいぶ時間を取られてしまった。
看護学校の試験問題は、半期授業の全てについてレポートを書かせている。ゆえに採点と言ってもレポートの評価なので、けっこう大変。
16時には切り上げ、スーパーで晩のつまみと酒を買った。夕方は筋トレとランニング。だいぶ涼しくなった。コロナ自粛の4月から走り始めたので、ほぼ半年。週一なら続くものだ。コロナ禍で少し健康体になった。

9月30日(水)

天気|晴れ/曇り

場所|宮城県気仙沼市某所

今日は普通に出勤日。朝からあまり体調が良くなかった。寝冷えしたかもしれないが、検温結果に異状はなかった。
伊勢湾台風資料展を見に来た唐桑の老人が「洞爺丸台風の資料は無いのか、それではいかん!」と謎のご立腹で、看視員からのヘルプコール。お話を伺ったところ、「いつかあなたと話したいと思っていた」とのこと。
震災で被災して、それ以来いろいろ忙しくて美術館に来ることができなかったのだとか。「若いころ、サンマ船に乗ってカムチャッカ付近で漁をした。座礁して死にかけた。外務省を通じて帰国した」など面白い話を聞いた。御年83歳と言っただろうか。その後、大変満足された様子でお帰りになったとの報告を受けた。「話したい老人」の話を聞く、それも文化を伝える大切な仕事。
夕方になって急きょ、「明日、振休消化のために休め」との指示。仕方がないので看護学校の試験採点は自宅で行うことにした。明日は家で仕事をする。それじゃ休みにならんけど。

10月1日(木)

天気|曇り

場所|宮城県気仙沼市某所

今日は振休で基本的には家にいた。朝8時に起きてすぐ、朝飯前にサバカレーの仕込みにかかった。サバは先日、9月28日に釣ったものを塩ゆでにし、瓶詰にしていたものを使った。カレーについてはだいぶ前に買ってあったレッドタイカレーの缶詰を使った。具材はサバの他に玉ねぎとシイタケを加えた。カレーの缶詰には刻んだタケノコや香草、唐辛子などがそれなりに入っており、けっこう充実したカレーになった。もろもろの調味料、香辛料を加えて完成。なかなかの仕上がりになった。1時間ほど寝かせてからブランチとした。
一休みし、昼ころから看護学校文化人類学の試験答案採点を始めた。ほぼ20歳の若者たちの物の考え方にはなかなか面白いものがあり楽しみながら採点したが、やはり時間がかかる。
21時過ぎに帰ってきた妻にカレーを振舞った。3分とかからず完食。カレーは飲み物ではないはずだが……。
明日の晩は久しぶりの気仙沼地元メンバーで飲み会。ちょっと楽しみだ。

10月2日(金)

天気|晴れ/曇り

場所|宮城県気仙沼市某所

今日は予定外の来客対応と電話対応が続き、予定していた仕事がさっぱり進まなかった。しかし今夜は飲み会なので仕事は切り上げた。日記もここで終わり。

10月3日(土)

天気|晴れ

場所|宮城県気仙沼市某所

今日は午前中に高校生の対応をした。地域社会研究という特殊な課題に取り組んでいる生徒で、「自然と共存する文化をつくることで持続可能な町を実現できるか」とのテーマに基づく五つの質問を持って訪ねてきた。自然災害による被災地ならではのテーマと言える。10時から11時40分頃までひたすらお話をした。
以前こちらから提供した話題についての追跡取材のような感じだったが、新しい価値観を持った若者が増えてくれればと思い、知りうる限りの情報を提供した。彼女たちが成長し、気仙沼に明るい未来をもたらしてくれることを祈りたい。

10月4日(日)

天気|曇り

場所|宮城県気仙沼市某所

今日は10時から12時まで震災伝承関係の打ち合わせ予定が入っていたが、先方の到着が11時で、そのまま話し込んで14時になってしまった。話題は石巻の復興祈念公園などについて。昼食をとる時間が無くなってしまったが、おにぎり一つなので、パクパク食べて終わりにした。
食後はすぐに試験の採点、最後の5名分を終わらせ、雑務を片付けたらもう17時、終業時間になってしまった。
個人的に頼まれた仕事があるため、帰りの打ち合わせを終えてから再び仕事にかかった。結局21時過ぎまでかかった。
明日は午前中、相談事対応で地元の水産加工会社に行く。休みだが仕方がない。午後はまたサバを釣りに行こうかな。

バックナンバー

2020

6

  • 是恒さくら(美術家)
  • 萩原雄太(演出家)
  • 岩根 愛(写真家)
  • 中﨑 透(美術家)
  • 高橋瑞木(キュレーター)

2020

7

  • 大吹哲也(NPO法人いわて連携復興センター 常務理事/事務局長)
  • 村上 慧(アーティスト)
  • 村上しほり(都市史・建築史研究者)
  • きむらとしろうじんじん(美術家)

2020

8

  • 岡村幸宣(原爆の図丸木美術館 学芸員)
  • 山本唯人(社会学者/キュレイター)
  • 谷山恭子(アーティスト)
  • 鈴木 拓(boxes Inc. 代表)
  • 清水裕貴(写真家/小説家)

2020

9

  • 西村佳哲(リビングワールド 代表)
  • 遠藤一郎(カッパ師匠)
  • 榎本千賀子(写真家/フォトアーキビスト)
  • 山内宏泰(リアス・アーク美術館 副館長/学芸員)

2020

10

  • 木村敦子(クリエイティブディレクター/アートディレクター/編集者)
  • 矢部佳宏(西会津国際芸術村 ディレクター)
  • 木田修作(テレビユー福島 報道部 記者)
  • 北澤 潤(美術家)

2020

11

  • 清水チナツ(インディペンデント・キュレーター/PUMPQUAKES)
  • 三澤真也(ソコカシコ 店主)
  • 相澤久美(建築家/編集者/プロデューサー)
  • 竹久 侑(水戸芸術館 現代美術センター 主任学芸員)
  • 中村 茜(precog 代表取締役)

2020

12

  • 安川雄基(合同会社アトリエカフエ 代表社員)
  • 西大立目祥子(ライター)
  • 手塚夏子(ダンサー/振付家)
  • 森 司(アーツカウンシル東京 事業推進室 事業調整課長)

2021

1

  • モリテツヤ(汽水空港 店主)
  • 照屋勇賢(アーティスト)
  • 柳谷理紗(仙台市役所 防災環境都市・震災復興室)
  • 岩名泰岳(画家/<蜜ノ木>)

2021

2

  • 谷津智里(編集者/ライター)
  • 大小島真木(画家/アーティスト)
  • 田代光恵(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 国内事業部 プログラムマネージャー)
  • 宮前良平(災害心理学者)

2021

3

  • 坂本顕子(熊本市現代美術館 学芸員)
  • 佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)

特集10年目の
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