Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021

連載東北からの便り

2020年リレー日記

2020

10

10月5日-11日
木村敦子(クリエイティブディレクター/アートディレクター/編集者)

10月5日(月)

天気|雨のち曇り

場所|岩手県盛岡市の事務所

雨の音で目が覚める。だいぶ寒くなってきた。今日は事務所でデスクワーク。PCの前に座っていられる日は貴重なのでどんどん作業。年末に向けて新型コロナウイルス感染症対策助成金案件が増えてきた。
昼ごはんはじゃじゃ麺の赤(辛いやつ)にニンニク多め。ニュースでは、今年で最後となる「ゆるキャラグランプリ」で、陸前高田の「たかたのゆめちゃん」が優勝したとのこと。高田にはずいぶん行ってないなあとぼんやり思う。一本松のあるあのへんはどうなっているのだろうか。砂埃とダンプカーの思い出しかない。更新したい。

10月6日(火)

天気|曇りのち晴れ

場所|岩手県盛岡市の事務所など

今日は車検。早めに家を出て事務所へ向かう。昨日よりさらに寒いのでタイツを履いてマフラーを出した。午後からは盛岡市公園みどり課の「緑のまちづくり会議」へ出席。Park-PFI整備事業、公園活性化プラン、緑の基本計画などについて。その後、非常勤講師を勤めている専門学校にて、動画撮影の打ち合わせ。
夜には娘の誕生日(本当は3日だったのだが)祝いでケーキを買って帰る。なんともう18歳。『6歳のボクが、大人になるまで。』という映画で、主人公の母親が大学生になって自宅を出る息子にむかって言うセリフ「I just thought there would be more」が思い出される。人生って「もっと長いと思っていた」けど、あっという間だ。この先もいろいろあると思うけど、まずはおめでとう。

10月7日(水)

天気|晴れ

場所|岩手県盛岡市の事務所など

午前中は、動画収録の会場下見と某社との定例ミーティング。午後は、月末の岩手アートディレクターズクラブ展覧会の会場下見→ラジオのレギュラー番組収録→岩手県産羊毛『アイウール』プロジェクトの打ち合わせの後、事務所に戻ってPC作業。外にばかりいるので、デスクワークがはかどらず。
アイウールは、県内のめん羊農家とホームスパン作家を繋いで商品制作を行ったり、福祉作業所に細かい作業を委託できないか模索したりして3年目を迎え、今年度はなんとグッドデザイン賞を受賞することができた。岩手県知事もアイウールのネクタイを購入してくださるそうで、関わったみんなが喜んでいるのがなにより嬉しい。一緒に動いているライター・水野さんとも祝杯をあげたいところだが、お互いに忙しくてまだ飲みにも行けず。とほほ。
夕飯後、毎週楽しみにしてる『刑事コロンボ』(NHK BS)を見てると、なぜか電話がかかってくる、というジンクス(?)が今週も発動。後半のストーリーがよくわからなくなる。まあ、犯人はわかってるけど。

10月8日(木)

天気|曇り

場所|岩手県盛岡市の事務所など

岩手県立美術館の「小さなデザイン 駒形克己展」へ、グラフィックデザイン科の学生たちを引率。駒形さんの幼児絵本『ごぶごぶ ごぼごぼ』には子供たちがずいぶんお世話になった。懐かしい。それにしても30年以上前の作品を完璧に保存(シワひとつないフライヤー!)しているのに驚く。
学校に戻り、動画撮影の準備。コロナウイルス対策関連の補助金事業で、クリエイターとクライアントのインタビュー動画を撮影するのだが、その制作を学生たちへ依頼した案件。いろいろ難しい点もあるが、学生たちがとても頼もしい。
収録後、事務所に戻りメールチェックなど。夜は来年に向けた案件の会議。ぜんぜんデスクワークできず。メールばかりが降り積もっていく。

10月9日(金)

天気|晴れ

場所|岩手県盛岡市の事務所など

もう金曜日! アイウールをIBC岩手放送が取材してくださるというので、県庁にて打ち合わせ。来週にはニュースの特集枠でオンエアとなる予定だが、テレビは高齢者にもわかりやすく伝わるので、とてもありがたい。めん羊生産者も高齢化しているので、喜んでいただけるのではないかと思う。
夕方からはZoomにてJAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)の展覧会委員会の初顔合わせセッション。今年度からの新テーマが「グラフィックデザイナーによる地域活性化」ということで、委員長の福島治さんを中心に、広島、栃木、鳥取、長野といった地方在住デザイナーが各地域での活動を展覧会にまとめていく。大変そうだが今後の展開が楽しみ。福島さんは、ソーシャルデザインを専門とするグラフィックデザイナーで、東日本大震災後は何度も沿岸部に通われ「やさしいハンカチ展」などの被災地支援プロジェクトにずっと取り組まれてきた方。いろいろ勉強させていただこうと思っている。

10月10日(土)

天気|曇り

場所|岩手県盛岡市から秋田県横手市

数週間ずっと休み無しなので、思いきって家族キャンプに出かける。犬も連れて完全オフ。まあなんとかなるでしょう(絶対的オプティミストなもので)。この時期はバイクでシャインマスカットを買いに出かけるのが恒例なので、キャンプもその方角で秋田県横手市へ。みんな新型コロナの自粛生活のストレス発散しに来てるのだろうか、キャンプ場は賑わっていた(そういえばみんなマスクをしてない)。
夜にテーブルのランタンをつけると、震災の夜を思い出す。娘(まだ小学3年生)と二人、停電の中で「キャンプみたいだね」と話したなあ。怖がらせないように、嫌な思い出にならないように必死だったなあ、などと。大粒のぶどうと焚き火と赤ワインで気持ちよくなってのち就寝。

10月11日(日)

天気|晴れ

場所|秋田県横手市から岩手県盛岡市

キャンプ場をチェックアウトし、横手市増田まんが美術館へ。旧増田町出身である矢口高雄先生の画業50周年展をじっくり見る。なんといっても『釣りキチ三平』なのだが、特に80年代からの画面密度と自在なカメラワーク、風景描写のパースなど、上手すぎて唸りっぱなし。白土三平の影響を脱し、オリジナルの表現をみつけたあたりののびのびとした描線がほんとに気持ち良い。いいものを見た。矢口先生、どうぞ長生きしてください。
帰路の途中で西和賀町の「スーパーオセン」に立ち寄り、肉と刺身を大量購入。いつ来ても安いので買いすぎてしまって困ります。帰宅後、洗濯などして夕飯をつくるも、娘がぜんぜん起きてこない。メールチェックなどして就寝。来週も働くぞ。

バックナンバー

2020

6

  • 是恒さくら(美術家)
  • 萩原雄太(演出家)
  • 岩根 愛(写真家)
  • 中﨑 透(美術家)
  • 高橋瑞木(キュレーター)

2020

7

  • 大吹哲也(NPO法人いわて連携復興センター 常務理事/事務局長)
  • 村上 慧(アーティスト)
  • 村上しほり(都市史・建築史研究者)
  • きむらとしろうじんじん(美術家)

2020

8

  • 岡村幸宣(原爆の図丸木美術館 学芸員)
  • 山本唯人(社会学者/キュレイター)
  • 谷山恭子(アーティスト)
  • 鈴木 拓(boxes Inc. 代表)
  • 清水裕貴(写真家/小説家)

2020

9

  • 西村佳哲(リビングワールド 代表)
  • 遠藤一郎(カッパ師匠)
  • 榎本千賀子(写真家/フォトアーキビスト)
  • 山内宏泰(リアス・アーク美術館 副館長/学芸員)

2020

10

  • 木村敦子(クリエイティブディレクター/アートディレクター/編集者)
  • 矢部佳宏(西会津国際芸術村 ディレクター)
  • 木田修作(テレビユー福島 報道部 記者)
  • 北澤 潤(美術家)

2020

11

  • 清水チナツ(インディペンデント・キュレーター/PUMPQUAKES)
  • 三澤真也(ソコカシコ 店主)
  • 相澤久美(建築家/編集者/プロデューサー)
  • 竹久 侑(水戸芸術館 現代美術センター 主任学芸員)
  • 中村 茜(precog 代表取締役)

2020

12

  • 安川雄基(合同会社アトリエカフエ 代表社員)
  • 西大立目祥子(ライター)
  • 手塚夏子(ダンサー/振付家)
  • 森 司(アーツカウンシル東京 事業推進室 事業調整課長)

2021

1

  • モリテツヤ(汽水空港 店主)
  • 照屋勇賢(アーティスト)
  • 柳谷理紗(仙台市役所 防災環境都市・震災復興室)
  • 岩名泰岳(画家/<蜜ノ木>)

2021

2

  • 谷津智里(編集者/ライター)
  • 大小島真木(画家/アーティスト)
  • 田代光恵(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 国内事業部 プログラムマネージャー)
  • 宮前良平(災害心理学者)

2021

3

  • 坂本顕子(熊本市現代美術館 学芸員)
  • 佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)

特集10年目の
わたしたち